企業価値で投資判断、財務データは参考程度に

「市場に上場していない未公開株式(プライベートエクイティ)」への
投資と長期保有に適した銘柄の選択は類似点があります。

仮に友人から未公開株の購入を勧められたとしましょう。未公開株の場
合、上場している株式と異なり、容易に売買することができませんから、
長期保有する覚悟で投資する必要があります。

では、その会社のここ3年間の業績が好調な場合、あなたは即決で投資
できますか?

私がその立場なら、社長と会談したり、会社を視察しておきたいと思う
はずです。社長との会談が実現したならば会社のビジョンや経営理念の
話に始まり、業績の伸ばし方、競争力の源は何か、短期と中長期の経営
戦略などを質問するでしょう。

しかしいくら社長が魅力的なことを話したとしても、働いている従業員
の目に覇気が無ければ、社長の言ったことに懐疑的になるはずです。さ
らに会社の実態を把握するためには、競合他社と製品を比較したり、で
きるなら取引先やお客様にお話をお聞きしたいと思うでしょう。長期保
有が前提なので、利益を出し続ける会社で無ければ困るのです。

もうお気づきだと思いますが、これこそが長期保有する銘柄の選択方法
なのです。

「100万円の投資で、1年後120万円になることを期待する」とい
うような場合は、この先3年間の売り上げ予測とその実現性をしっかり
チェックできれば決断は可能ですが、これは短期保有する銘柄の選択法
です。

短期保有のために選択した企業は、問題が生じた場合、企業価値が大き
く棄損し、問題が生じる前の水準まで回復するのに長い時間がかかりま
す。また企業自体は利益を伸ばしていたとしても、株式市場の状態によ
っては株価が低迷する可能性もあります。

このようなリスクの高い投資では無く、銘柄を慎重に選択し、しっかり
腰を据えて、「企業の成長を見ていく」ような投資で利益を得ていくの
が本来望ましい投資です。

つまり、30年ぐらいの長期的な視点で投資する企業を選ぶ場合は、
「数字では表せない資産や価値」を見抜く必要があるのです。

「企業の寿命がだいたい30年と言われる中で、『30年目線』に合理
性があるのか」との厳しいご指摘もありますが、30年間の業績を的確
に予想するということではもちろんありません。例えばスキ―ではちゃ
んと足元も見ておかないといつ転んでもおかしくないし、車の運転でも
遠近両方に注意を払えるのが上手なドライバーです。足元ばかり注意し
ているとかえって事故を起こしやすくなります。短期の業績にばかり目
がいってると、重要なものを見落とすことになるでしょう。

「30年目線」で投資する企業を選択する場合、経営者の考え方や従業
員の様子、取引先との関係や顧客の満足度といった情報、つまり財務デ
ータには記載していない情報を見る必要があります。

30年目線からの銘柄選択法は、次に挙げる5つのポイントが重要にな
ります。

1つ目は企業の「文化や理念」です。明確な企業理念があり、それが経
営者、従業員を問わず共有し、商品・サービスによって顧客、ひいては
社会に貢献しているかどうかがポイントとなります。

2つ目は企業の「競争力・ブランド力」です。スタンダードになってい
る商品はほぼ例外なく競争力が強い製品です。見掛け倒しではない競争
力の源泉がしっかりしていることが、長期的にブランドとして認知され
ます。そしてそれらがしっかりしている企業は顧客の事を考えた商品・
サービスを供給していきます。

3つ目は企業の「マネジメント・経営陣」です。財務の健全性を維持す
る一方で、必要な時に必要なリスクを取りうる経営陣。一貫したビジネ
スモデルを運用できているかがポイントです。

4つ目は企業の「成長性・収益性」です。その業界の平均利益率を上回
る業績利益率をほこり、かつ、それが長期間続いている。また株主資本
利益率(ROE)が水準を上回り、配当に対してはっきりした方針を持
つか否かがポイントとなります。

5つ目は企業の「ガバナンス力・対話力」です。ステークホルダー重視
を意識しており、長期的視野と思いやりの目を持って経営していること
がポイントです。

企業文化や対話力、組織の価値観などは財務データには記載してありま
せん。目に見えないモノを見る洞察力、感性が無ければ、30年目線の
投資はできないでしょう。

関連記事

おすすめ記事

ページ上部へ戻る