投資先を選ぶ時に重要なのは、中長期的に成長できるか否か

過去3年分の財務データを集めたぐらいでは、30年目線で投資するた
めの資料には全然足りません。ここで実践したいのは、会社の歴史を知
り、より長い期間の財務データを収集することです。

企業分析は、過去30年程度の財務データ以外に、会社の歩み、業績の
推移、従業員の数、役員構成の変遷などを収集することから始め、収集
したデータからその企業の先行きをシミュレートするのがポイントにな
ります。分類したデータからは、会社の癖や性格が見えて来ます。通知
表や日記、写真からその学生の個性を推測するような感じです。

財務諸表等を記載した年次報告書(アニュアルレポート)や、会社の歩
みを記した社史を読み込むことも必要。「そんな昔の資料を見ようとす
る投資家はいない」と企業側は言うかもしれません。

しかし、会社の歩みを調べる事で重要なのは、さまざまな経営の場面で
企業や役員がどのように考え、どのように情報発信し、どのような行動
をしたかを知ることです。業績が良い時、悪い時、それぞれどんなこと
をしたか理解する作業です。当時の財務状況を照らし合わせていくと企
業の善し悪しがわかってくるでしょう。

株主として企業を訪問する前に、これらのことを調べておきます。そし
て、投資家向けの広報活動(IR)担当に「15年前はたいへんでした
ね」などと話をふると、「よく聞いてくれました」と話が弾むこともあ
るようです。

「15年前の経験がどう生きてくるか」「当時の苦しい状況があったか
ら今がある」という話は、その企業の将来を予測する上で、重要な資料
になるのです。30年も経てば経営者が何代も交代しているはずですが、
どのような経営が承継されてきたかが見えます。

銀行などの機関投資家は直近3年ほどの資料で、今後3年間を予測する
といった方法を用いるため、10年前に何があったかといったことには
ほぼ関心がありませんが、「以前の失敗事例がどう生かされているか」
ということは、私たちのような長期的投資を考えている一般投資家には
最重要情報。

成功体験しかない企業と、失敗を繰り返し最後に成功した企業。私達長
期的投資を考えている人間達からすれば、後者の方が魅力的です。

一例を挙げると、とある部品メーカーは過去に経営危機を経験しました
が、その際、親会社もメインバンクも助けてくれなかった中、唯一手を
差しのべてくれたのは、何とライバルの外資系メーカーだったそうです。
同社はその経営危機の経験からキャッシュを厚めに保有するようになり
ました。過去を知らない投資家からは「現金を保有していても成長はで
きない。設備投資に回すなど、資本を効率良く使うべきだ」という批判
にさらされたそうです。

さらにリーマンショック後は、とうとう保有する現金が時価総額を上回
ってしまいました。しかしそのことが投資家が同社を高く評価すること
に繋がります。金融不安が進むと、どんな企業でも資金繰りに苦労しま
すが、キャッシュを多く保有する同社は、この困難を回避できると市場
から評価されたのです。

キャッシュを多めに保有するのは、過去の苦い経験に基づく自衛策です。
そして経営危機の時、唯一助けてくれた外資系メーカーとは事業面で良
好な関係を維持しています。それらすべてが、企業の存続、そしてその
先の高い市場の評価に繋がったのです。

「資本の生かし方を知らない」「キャッシュだけが多い」といったこと
は、過去3年ぐらいの財務諸表を見ただけでは企業を高く評価する指標
にはなりません。それどころか低評価に繋がるでしょう。しかしその会
社の歩みをしっかり学ぶことで、弱点に見える事も、ほんとは強さの表
れだと気づくことができます。失敗を糧にした会社の経営者は強いから
です。

企業から得た情報の裏付けのため、IR担当以外の方達からも話を聞く
のが重要になります。投資家がIR担当以外の従業員に話を聞くのを嫌
がる企業もあります。しかし企業自体に自信があれば断る理由は無いは
ずですから、その対応も会社を計る指標となるでしょう。

就活中の大学生の話も企業を知る上で重要な情報になる場合があります。
彼らは会社のネガティブ情報、例えば「若手の退職率が高い」「給与は
高いが社員教育をしない」といった情報を掴んでいるのです。そのよう
なネガティブ情報が多い企業は、現在の数字は良くても、将来の成長は
限定的ではないかと感じます。

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