日本企業が海外進出して成功するのに必要なカギは?

日本企業が海外進出し、その進出した企業すべてが成長し、成功する訳
ではありません。

日本の高度成長期。日本企業はアメリカに大量の家電や自動車を輸出し
て利益を得ていましたが、あまりに売れ過ぎたため、80年代に貿易摩
擦となり、日本企業は現地生産に力を入れる事で摩擦解消しようとしま
した。この時期の海外進出は、日本の視点から世界を見る「国際化」に
過ぎなかったのです。

それに対して現在、海外進出に積極的な経営者の方々は、旧来の日本の
視点から世界を見るのではなく、地球儀を俯瞰して、「世界規模でビジ
ネスを考えた場合に、日本の本社がするべきことは何か」という視点に
切り替えて見ています。これこそが旧来の「国際化」と一線を画す「真
のグローバル化」であり、この視点は海外進出に肯定的な企業の経営者
の多くが共通認識としてもっているものです。

たしか2011年の初め頃だったと思いますが、「武田薬品工業」の社
長である長谷川閑史氏が「武田の課題は本社のグローバル化だ」という
発言をしていたと聞きます。

「東京と大阪、2大本社体制である武田薬品工業が海外へも積極展開す
る。よって本社(日本)の人間も英語をしゃべれるようになろう」とい
う単純なことではなく、「武田薬品工業は世界企業を目指すのであり、
日本本社は世界規模のグローバル企業として、世界の多様性にどのよう
に対応し、またどのような役割を演じるべきかを考え、本社をそれを担
える組織に改編する」という意思がありました。

武田薬品工業は、その数カ月後、スイスのナイコメッドという製薬企業
を1兆1000億円で買収しました。これは2011年最大のM&Aと
なりました。背景には、主力薬品の特許切れに伴う新たな展開の1歩と
いうのがあったようです。

武田薬品工業は、既に進出していたアメリカだけでなく、ヨーロッパ、
新興国への進出戦略を練っていました。そしてナイコメッドはそれらの
国々に強固な販売網を築いており、武田の戦略に合致していました。運
よくユーロが下落していた時期だったので、良い買収になったと考えら
れています。

この買収で武田のビジネスエリアはいっきに世界70カ国以上にまで広
がりました。

武田以外でもヘルスケア企業の「オムロン」や製薬メーカーの「エーザ
イ」の経営トップの方々が本社のグローバル化を進めている旨、発言し
ています。

真のグローバル化企業に生まれ変わるには、組織や企業風土すべてを変
える必要があります。人事部を例にあげると日本の人事部は強い権限を
有していますが、海外では、人事は各部署ごとに考えるため、人事部は
総務部的な権限しか保有しておりません。

昨今、「ダイバーシティ」なる言葉をよく聞く機会がありますが、これ
はグローバル企業が旧来のシステムや価値観にとらわれず人材を活用す
ることで、激変するビジネス環境に対応しようとするものです。

以前外資系証券会社に勤務していた方の話ですが、そこの東京オフィス
には30カ国以上の人々が勤務していました。ある時「同性愛者の方は
集まりにきてください」というメールが届きました。後に聞いたところ、
同性愛者の人権の尊重を考えるための勉強会の誘いのメールだったよう
です。

日本企業では想像できないことですが、グローバル化するということは
多様な価値観を受け入れることであり、同様に多様な宗教も受け入れる
事なのです。

旧来の日本型年功序列組織も海外では維持するのは困難です。

真のグローバル化を図るためには、海外の優秀な人材を得る必要があり
ますが、従来の優秀な男子学生ばかりを囲い込むという手法では、「貴
社には女性の取締役が過去にも現在にもいない」とか言われて、優秀な
女性の人材の確保は難しいでしょう。

これに対応するため、「エーザイ」の内藤晴夫社長は「数年以内に役員
の一定割合を女性にしたい」旨の発言もしています。

幹部候補生が足りなくなる。海外に拠点を増加させるとマネジメントが
たくさん必要になり、そういう問題も生じます。

解決策としては「ローソン」「アサヒビール」「ファーストリテイリン
グ」のように自社内に大学を作り、語学学習やMBA的な教育を1年前
後集中して行うことも良いでしょう。

日本の実効税率は43%前後ですが、原材料の調達、保管、製品の組み
立て、物流を含めた最適化を図り、もってコスト削減につなげるサプラ
イチェーンマネジメントも重視されてきています。

海外進出で利益を得ているある企業は、日本政府に頼らず、現地政府に
「10年間法人税をゼロにしてくれれば、進出してこれだけの雇用を行
う」と直談判した例があります。「日本電産」や「HOYA」はこのよ
うな交渉で、実効税率を20%前後まで下げるのに成功しています。た
だアジアの中には実効税率が15%という破格の数字の国もありますか
ら競争は激化しています。

海外市場で製品を販売する場合、注意しなければならないのは、レギュ
レーション(ルール)やマーケティングが国によって違うということで
す。この点に充分に留意しておく必要があります。国よって趣味嗜好が
異なりますし、その国で自社製品が受け入れられるか調査することも海
外進出して成功するための必須の条件と言えるでしょう。

新興国へ進出する際、例えば「アサヒビール」は社員をまず派遣します。
ただこの社員の目的は「その国の生活者」になることであり、派遣され
る1年間は現地の人と同じように生活し、進出すべきかどうかを地元目
線で判断し、進出するならばどのような点に注意すべきかを考察したレ
ポートを提出させるようです。

家電の場合、冷蔵庫ひとつとっても国によって異なることだらけです。
そういうことに対応するために、現地に居住し、現地目線で生活習慣や
商慣習を調査するのは重要な位置づけにすべきです。

「ダイキン工業」も南半球の国々に、日本の製品をそのまま持っていく
のではなく、現地に合ったパワフルさと低価格が目玉の商品を販売開発
し、対応しているそうです。

もちろん日本の企業文化すべてが否定される訳ではありません。顧客重
視、部署の協力体制、高い道徳観などは日本企業しか持ちえない資産で
あり、海外進出する企業の中にもそれらを武器にしている企業もありま
す。

このような生真面目な日本の企業倫理は「グローバルスタンダード」に
なっていくのかもしれません。

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