日本の証券会社は日本株を勧めてくれない、その本当の理由

日本のメディアや個人投資家が国内成長企業に気づかない理由は他にも
あります。それは証券会社が日本株取引に消極的な体質であることです。

金融商品はさまざまあり、さらに増える傾向にあります。しかし、証券
会社にとって株式は重要な商品であるはずです。それなのに、なぜ消極
的なのか。理由は簡単で、日本の株式は儲けが少ない商品となってしま
った点にあります。

売買手数料の自由化は、米国では1975年からはじまりました。およ
そ20年かけて、資産残高に応じて手数料が決められるサービスが生ま
れ、さらにネット証券やディスカウントブローカーなども現れました。

こうした証券会社のビジネスモデルの変遷によって、投資家は旧来に無
い恩恵を得られるようになったのです。

米国よりも遅れること実に20年以上の1998年から、ようやく日本
において自由化が始まりました。99年に完全自由化となりましたが、
日本の手数料引き下げは、残念なことに、投資家にメリットをもたらす
に至っていないといわれます。

当時の日本の証券各社は、米国の事例を研究して、どのようなビジネス
モデルが適しているかを検討したものです。しかし、自由化直後の19
99年頃はITバブルであったため、これが後になって災いとなりまし
た。証券会社は手数料を下げても取扱件数の多さでビジネスができてし
まい、株式手数料に依存するビジネスを引きずってしまったのです。

ところがITバブルが崩壊し取扱件数が激減すると、ネット証券各社の
サービス拡充に伴って、おのずと手数料引き下げ競争となり、証券会社
が得られる手数料は、自由化前に比べて激減していったのです。

ある大手ネット証券の手数料を例に挙げてみます。日本株の約定金額1
0万円までならば145円、20万円ならば194円、50万円までな
らば358円、100万円は639円となっています。手数料自由化前
は100万円の場合1万1500円の手数料でしたから、同社に入る手
数料は18分の1に減ってしまったことになります。

さらに時を経て、別のネット証券では100万円の取引で手数料が30
0円台というところも出現しました。手数料の価格競争は、ファースト
フード業界の比ではない激烈ぶりです。

ネット証券が日本国内株売買の主流となり、証券会社の営業マンが対面
で日本株を勧めるスタイルはすっかり廃れました。

東京証券取引所が毎週木曜日に発表する「投資主体別売買動向」では、
売買代金全体のうち、個人投資家によるものが20%強、機関投資家に
よるものが10%強、60~70%は外国人投資家、証券会社の自己売
買によるものが数%。

しかも個人投資家の売買のうち90%がネット経由による売買といいま
すから、大手証券会社経由の売買は数%しかない計算となります。証券
会社の営業マンがマクロ経済展望を解説し、アナリストレポートを顧客
に提供しながら行う株式営業は、ビジネスとしては、ほぼ消滅しました。

証券会社が日本国内株式営業に経営資源を投入する余裕がなくなると、
悪循環はさらに加速化します。取引高に応じて手数料のうちの一定比率
を証券会社から受け取る「歩合外務員」はいなくなり、日本株や日本株
ファンドが積極的に営業されなければ、関連する情報を求める人も減っ
ていきます。

アナリストの数も、日本株に関する情報もどんどん減り『日本では株の
アナリストは絶滅した』とまでいわれるようになりました。株式の営業
現場において、日本経済や日本の株式は必要以上に手厳しく非難される
一方で、対抗して日本株でリターンを得る方法を解説する人などいなく
なってしまったのです。

もちろんアナリストレポートや評論家の分析がないわけではなく、マネ
ー雑誌やインターネットで見たり聞いたりすることはできます。しかし
昔の営業マンが株の情報を一般投資家に提供していた頃の意味合いとは
違い、日本株に興味がある人が自発的にチェックする程度です。日本株
に注目していない人を振り向かせるほどの力はありません。

売買する人が減り低迷する日本株。これほどまでに活気がない市場にな
ってしまったのは日本の証券会社のビジネスモデルや構造に問題がある
と言っても過言ではありません。厳しい、厳しいといわれる日本株式市
場においても目覚ましい業績を上げる企業はありますが、日本の投資家
から着目されないのが残念でなりません。ちなみに、アベノミクス相場
で積極的に日本株を買っていたのは外国人投資家でした。

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