ロングセラーのファンドを育てられない日本

米国には大手運用会社「キャピタルリサーチ(キャピタル)」が80年にわたって運用する米国株ファンドがあります。運用資産は16兆円、年平均12~13%のハイリターンをあげるものです。

それに比べて日本は、ベストセラーはあるけれど、キャピタルのように何十年もの間、資金を集め続けられるロングセラーは存在しません。

米国では運用実績(トラックレコード)を見て投資するファンドを選ぶのが常識となっていますが、ロングセラーがない日本ではトラックレコードがないファンドが売れます。日本のこの現象は、欧米の金融関係者には「全く理解できない」と言われます。欧米金融関係者の指摘のとおりなので、日本の金融関係者はさぞかし説明に困ることでしょう。

たとえばキャピタルのファンドは、幾度かの戦争、オイルショック、ブラックマンデーも経験しながら苦難を乗り越えた結果、年率10%を超えるリターンを上げているファンドです。この先いつ、経済にマイナスの影響を及ぼすような出来事が起こるか誰にもわかりませんが、キャピタルなら長く持っていればリターンがあるはずだ、という安心感があります。これが投資信託の正しい姿なのではないでしょうか。

日本にもキャピタルのようなファンドが誕生して欲しいものですが、そのためには、日本の販売会社も投資家も、考えを改めなくてはなりません。

日本では純資産残高上位ファンドの顔ぶれが10年間で大きく変わっていますが、米国ではほとんど不動のロングセラーが名を連ねます。ただし、米国では、企業の時価総額がトップ10が大きく変遷しています。

昔は「ゼネラルモータース」などが上位でしたが、今や顔ぶれがすっかり変わり、現在は「グーグル」「アップル」などIT系企業の時代です。こうなる理由は、投資家の行動が株式市場に影響を与えるからです。

ロングセラーファンドに長期資金が集まる仕組みができあがっていて、かつ、長期投資に値するいい企業が選ばれて買われます。逆に選ばれない企業は淘汰されます。買収による業界再編もありますし、倒産企業が再生ファンドによって再上場されるなどの経済活動も円滑に行われます。長期投資家による銘柄選択によって市場に規律が生まれ、新陳代謝が起きているのです。

対して日本はどうでしょうか。本来ならば長期にわたって成長が期待されるはずのアクティブファンドが、ベンチマークという足かせによって正しい銘柄選択を行なえない状態にあります。またインデックスファンドは銘柄選択をしないため、いい企業も悪い企業もセットで買ってしまいます。

さらに、日本では機関投資家もパッシブ運用を中心に行うため、これらの結果、米国にあるような市場の規律が働きません。つまり市場に新陳代謝が起こらず、市場が活性化されない。市場が低迷し、個人投資家が株式市場に希望を持てなくなるという悪循環となっています。

ロングセラーファンドがあれば長期投資資金が集まります。運用会社に個人投資家の資金が託され、運用会社にいい企業を見極める力があれば、投資家もリターンが見込めるとして、さらに資金を投入します。こうして市場は動き、企業が成長する図式が成り立つのです。投資家にはリターンがあり、企業には成長があり、運用会社は信託報酬がある、といった理想的な関係が築けるはずです。

現在の日本にはロングセラー商品がないため、ロングセラーを求めるならば米国などの海外ファンドを買うより他にありません。これはとても残念なことです。日本国内でもロングセラーを目指して運用するファンドを探し、少しずつ投資する方法から、ぜひ実行していきたいものです。

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