短期目線に固執するために、マネーの暴走にとまどう個人投資家

10年で株価が2倍になった企業が、何かのショックで大きく株価を下
落させるのは珍しいことではありません。「投資は怖い」といわれるの
は、このあたりに理由があります。

しかし歴史的に見て、こうした現象は何度も起こっています。記憶に新
しく、かつ大きかったのはリーマンショックです。しかも最近はこうし
たショックが起きる頻度が上がっている上、値動きも大きくなっていま
す。

値動きが大きい理由は実体経済よりもマネー経済の規模が膨らんでいる
ことが原因です。株式、債券、証券化商品、ローンなどを合わせたマネ
ー市場規模は1990年に世界GDPの261%でした。ところが20
10年には356%まで拡大。

また2005年から07年までの3年間では名目GDPが10.6%増
であったのに対し、マネー資本は14.2%増。そしてリーマンショッ
ク後の08~2010年はGDPが1.5%増であったのに対し、マネ
ー資本は10.1%。GDPの増加よりもマネーの増加が大きくなって
います。

それではなぜリーマンショック後にマネー経済が拡大したのでしょうか。

理由は景気の悪化を食い止めるため各国が金融緩和政策を大規模に行い、
マネー供給量が増えたためです。しかし金融緩和とは、景気悪化をまぬ
がれるための時間稼ぎとも言える策です、決して手放しで喜べる状態で
はありません。

リーマンショックの発端は米国の不動産業界でしたが、マネー経済が過
剰に膨らんだ状態であったため次々に飛び火し、本来ならば直接関係な
いと思われる自動車業界はじめ、他の業界もダメージを受けました。

また、実体経済に多大な影響を与える金融緩和は、実は投資家の心情を
左右し、行動をも変えてしまいます。

2012年9月、ECB(欧州中央銀行)・FRB(米連邦準備制度理
事会)が無制限・無期限の追加金融緩和を行い、日本も他の先進国に追
随するか否か、動向が注目されたことがありました。現に日銀が金融緩
和に踏み切ると急激に日本株が買われて株価が上昇しました。

続いて同年の11月に総選挙で自民党が政権復帰すると「金融緩和圧力
が強まる」「円安が進んで日本国内の企業業績が好転する」と見られた
ことから、日経平均が年初から12%高・月間世界トップの上昇率を記
録するに至るという大きな動きを見せました。

中央銀行の金融緩和のような、市場に大きな影響を与える出来事を「イ
ベント」と呼び、それによる混乱を「イベントリスク」と言います。

頻繁に起こるイベントリスクの中で、多くの投資家は米国は金融緩和政
策を今後どのように動かすのか、欧州や日銀がそれに追随するかどうか
などの情報を注視しています。情報によって、あわてふためき混乱する
のは嫌でしょうが、短期で結果を出そうと思えば「イベントリスク」の
影響は回避できません。

ヘッジファンドでもない普通の人が、マクロ経済や金融政策、政治動向
などのイベントリスクを踏まえた上で、短期の投資判断をするのはほぼ
不可能な話です。

「イベント」と「イベントリスク」のサイクルは、世界同時多発的な大
きなものが3年に1度、軽いものは3ヶ月に1度と頻発しています。

しかも市場関係者の警戒感も高まっていますので、マネーは過敏に動く
傾向にあります。ギリシャで起こった財政危機が引き金となって世界中
の株価が下落し、経済が混乱したのも記憶に新しい一例ですが、個人で
この一連を事前に予測していた人は、おそらくいなかったでしょう。

ここまでの話を踏まえて、本来の「投資」について考えてみます。

たとえば日本の医薬品メーカーの株価がイベントリスクで1日に10%
下がることは往々にしてあり得ます。しかしこの場合、会社の価値が1
日で10%下がったわけではありません。

イベントリスクに翻弄されるのは「投機」です。イベントリスクよりも
大きなサイクルで企業の業績や価値を判断する「投資」をすれば、マネ
ーの暴走に翻弄される必要がありません。大きな森の中で、育っている
木に目を付けること。価値ある銘柄に対して、長期的目線でじっくり付
き合うこと。これが「投資」です。

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